記録遺産を守るために
全国歴史資料保存利用機関連絡協議会【全史料協】
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EASTICA第14回総会及びセミナーに参加して(2019.11.26-27)
 全史料協 副会長事務局
 京都府立京都学・歴彩館 副館長
 平井 俊行


 令和元年1126日(火)、27日(水)の2日間、東京都千代田区飯田橋のホテルメトロポリタンエドモントでEASTICA14回総会及びセミナーが開催された。日本を含む7つの国と地域から167人の参加があった。全史料協はEASTICABカテゴリーメンバーであることから、国際交流を担当する副会長事務局である京都府立京都学・歴彩館の平井が参加した。

 総会ではこれまで議長を務めていた日本の国立公文書館長の加藤丈夫氏からMr.Wang Shao Zhong (National Archives Administration of China)にバトンタッチされるなど4年ごとの役員の改選等が行われた。

 引き続くセミナーでは、テーマを「アーカイブズのこれから−膨張する多様な記録にどう向き合うか」とし、飛躍的な技術革新が続く記録・情報管理分野でのデジタル技術の可能性と課題について議論を深めた。セミナー講師として国際公文書館会議のアンセア・セレス事務総長、米国国立公文書記録管理院のローレンス・ブリュア首席記録官、国立情報学研究所の高野明彦教授を、また、パネルディスカッションのモデレーターとして筑波大学名誉教授の杉本重雄先生をお招きし、それぞれの立場から、膨張する多様な記録との向き合い方についてのお話をいただいた。

 2日目の午前中には国・地域別報告が行われ、日本・中国・韓国・モンゴル・香港・マカオから現状と課題についての報告が行われた。

特に全史料協のメンバーの皆様方には、今後の我々の問題と直結する日本の国立公文書館の新垣和紀氏の報告「デジタル時代と向き合う国立公文書館の挑戦−令和新時代におけるデジタル技術の活用と人材育成」について、一読いただきたい。

概要については「1 デジタル・ガバメント化の潮流−急増する多様な電子公文書等の受入れに向けた準備」と題して国が進める行政サービスの100%デジタル化への取り組み1を紹介した。さらに電子的な行政文書管理の充実を図るため、電子媒体を正本・原本とする枠組みを構築すること、新たな国立公文書館の開館時期を目途に本格的な電子的管理への移行を目指すこと、文書管理業務の処理の自動化の枠組みをさらに具体化し、来年3月末までに一定の結論を出すことが決められている (2)

これら二つのことを実現するため、ストレージの見直しやハードウェア・ソフトウェア両面での処理能力の向上等のシステムの強化や運用手順の効率化、さらに信頼性を確保しながら長期に安定した保存を行うこと等の課題がある点が指摘された。

「2 既存の紙資料のデジタル化−資料へのアクセス向上へのデジタル技術の活用」では「国立公文書館デジタルアーカイブ」の中で20193月現在、国立公文書館が保存する特定歴史公文書等の約19.3%に当たる約28.9万冊分、約2,162万画像がインターネットで公開されていることやスマートデバイスへの対応等が行われていることが紹介された。さらに現在試験版が作製されている「ジャパンサーチ」とのメタデータ連携機能の強化についても、システムの要件を確定していく作業を進めていることが報告された。また全史料協との関わりについても2009年に全国の公文書館等がデジタルアーカイブを構築するための指針として「公文書館等におけるデジタルアーカイブ・システムの標準仕様」を策定し(2018年改訂)、全国17の公文書館等のシステムと横断検索連携を実現していることが報告された。

最後に「3 デジタル時代のアーキビスト養成に向けて−職務基準書の策定を中心に」と題して、デジタル時代の人材育成についても触れられている。これまで述べられてきたデジタル技術の知識を持つことも重要であるが、さらにアーキビストとしての果たすべき使命や役割を明確にしておくことが求められ、201812月に職務基準書の確定版が公表された。この職務基準書の基本構成は@アーキビストの使命、Aアーキビストの倫理と基本姿勢、Bアーキビストの職務及び必要とされる知識・技能等がまとめられているとの報告があった。今後職務基準書を人材育成の基礎資料と位置づけ、その内容を大学教育や諸機関が実施する教育や研修に反映させることや職務基準書に示すアーキビストとしての能力・要件を備えた者に対する認証の仕組みを設け、アーキビストの専門職として社会的地位を確立していくが重要であるとの考えが示された。

全史料協としては現在、国立公文書館の中に設置された「アーキビスト認証準備委員会」の動向と合わせて注視していきたい。

最後に「デジタル技術の活用」とデジタル時代における「アーキビストの養成」は国立公文書館にとって、二つの大きな挑戦であるとの認識されている。全史料協としても国立公文書館の取り組みに協力し、二つの大きな事業が全国の自治体等に浸透していくように努めていかなければならないと認識させられたセミナーであった。

EASTICA14回総会及びセミナーの詳細な開催報告と基調講演等の配布資料等については、遅くとも1月中旬ごろまでに、国立公文書館のホームページにて掲載される予定と伺っており、また情報誌『アーカイブズ』の2月公開分にて、開催報告記事が掲載されるので、そちらを一読願いたい。

 
注1 2016年に制定した官民データ活用推進基本法(平成28年法律第103号)や2018に策定された「デジタル・ガバメント実行計画」(平成30720日デジタル・ガバメント閣僚会議決定)、20195月に成立した通称「デジタル手続法」(正式名称:情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るための行政手続等における情報通信技術の利用に関する法律等の一部を改正する法律、平成31年法律第16号)参照

注2 20193月「行政文書の電子的管理についての基本的な方針」(内閣総理大臣決定)