記録遺産を守るために
全国歴史資料保存利用機関連絡協議会【全史料協】
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第33回 茨城大会及び研修会
〔来賓挨拶〕
 第33回全国歴史資料保存利用機関連絡協議会全国大会の開催に当たり、一言ご挨拶を申し上げます。
 まず、本日、ここに全国各地からご参集の皆様方は、公文書やその他の記録の収集・整理、保存及び利用のための実務や調査研究という、極めて重要な業務に長く携わっておられる方々であり、日頃のご労苦に対し、心から敬意を表する次第であります。
 今大会においては、「アーカイブズの新時代へ−個性ある存在をめざして−」をテーマとして、研修会や研究会が行われると伺っておりますが、今大会でのご議論の成果を皆様方がそれぞれの立場で生かしていくことにより、わが国の公文書館制度がますます発展していくことを期待するものであります。
 ただ、残念なことに、アーカイブズを取り巻く環境は、人的にも、予算的にも、厳しいものがあります。しかしながら、厳しい環境の下にあっても、公文書館制度の充実を図っていくことは、私どもに課せられた重要な責務であると考えております。
 この認識に立って、国立公文書館としても公文書館活動の振興を目指し、今後とも更なる努力を続ける所存です。
 具体的に、国立公文書館を巡る主な動向については、次のとおり、3つの大きな項目にまとめてご報告できるかと存じます。
1 最初に、当館の活動について、報告させていただきます。
(1) 所蔵資料をできるだけ幅広く、適正に一般の利用に供することが、公文書館の使命であります。このような観点から、まず、個人情報保護法の本人開示に準じて、昨年度、本人情報閲覧制度を設けました。同制度に基づいて、閲覧申込が既にあり、その閲覧を認 めています。
 また、国立公文書館が保存する非公開の東京裁判弁護関係資料約1200冊の公開について、国会等の場において、議論がなされたことを契機として、昨年度から、順次、公開区分の変更を行ってきましたが、最終的に「公開」あるいは「要審査公開」への区分変更が完了いたしました。
 さらに、現行の公開基準のうち非公開期間の経過年数の上限が設定されていない個 人情報について、上限設定の適否を含めて有識者から意見聴取をするなどその見直し を検討しているところであります。
(2) 公文書館等の職員に対する研修の充実・強化については、国立公文書館に「公文書館制度を支える人材養成のためのプロジェクトチーム」を設け、検討していますが、今 年度、公文書等の保存及び利用に関する基本的な事項の習得を目的として実施している「公文書館等職員研修会」に、62機関71名の参加がありました。急増した受講申込者に対応するため、外部施設を借り上げて実施いたしました。各アーカイブズの現場の厳しい状況は、よく承知しておりますが、長期的視点に立って、次代のアーキビスト養成につき、各地の公文書館等におかれては、当館の各種の研修プログラムの更なる活用を図られるよう、格段のご配慮をお願いいたします。
(3) デジタル・アーカイブにつきましては、今年度、全国の公文書館等のデジタル・アーカイブ化推進に資するため、目録データベース及び画像提供に関する標準仕様書案の検討を行うことといたしました。既に、全国の50の公文書館等に対して、当館菊池館長からその推進に当たって、調査への協力依頼を行ったところですが、必要に応じて、直接 訪問をして、それぞれの館におけるデジタル・アーカイブ化への対応状況を把握させて いただくこととしております。将来的な標準化された歴史公文書等デジタル・アーカイブ のネットワーク構築を目指し、当館としても、できる限りの努力をしてまいりますが、皆様におかれましても、よろしくお願いいたします。
2 次に、国際交流についてであります。国際公文書館会議(ICA)は、1948年6月9日、UNESCOの支援によって発足した非政府・非営利機関ですが、世界約190か国・地域の1400機関会員、200個人会員が参加して様々な活動をしています。来年は、ICA発足60周年の年に当たるため、これを記念して、「6月9日」を「国際アーカイブズの日」とし、来年の同時期には、各国において、「国際アーカイブズの日」関係行事が実施されることとなります。わが国においても、皆様ともよく相談させていただきながら、これに呼応する活動を展開してまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 また、先月には、10年ぶりの日本での開催ということで、東京において、国際公文書館会議東アジア地域支部(EASTICA)第8回総会及びセミナー、シンポジウムを開催いたしました。テーマは、「電子政府化の進展と電子記録管理」であり、セミナーの基調講演は、米国国立公文書記録管理局ERAプログラムディレクターのケネス・ティボドー氏及び筑波大学大学院図書館情報メディア研究科教授の杉本重雄氏により行われ、その後活発な質疑応答がなされました。シンポジウムについては、「デジタル時代のアーカイブ−アジアからの発信−」をテーマに、歴史史料共有の手段としての電子化、データベース化に携わってこられた研究者の立場から、東京大学史料編纂所の保立教授とマレーシア国立公文書館電子記録支援業務の責任者であるシャフィー氏が講演され、その後、パネリストの皆さんによる討議が行われました。
 来年のEASTICAセミナーは、韓国国家記録院の新館が開館することに伴い、4月に開催されることになっています。また、4年に1度開催されるICA大会が、来年7月にマレーシア国立公文書館の協力を得て、同国において開催されることになっており、本日、ご出席の皆様におかれましても、積極的に国際的な公文書館活動へ参画されるようお願いいたします。
3 一方、国内の動きは、次のとおりであります。
(1) わが国アーカイブズの発展と振興のためには、関係団体間の連携・協力図る「意見交換の場」が必要であるとの共通認識の下に、昨年10月以降、準備を進めてきました「アーカイブズ関係機関協議会」の初会合が、日本歴史学協会等の参加の下に、全史料協 もオブザーバーとして出席され、設立会合を5月23日に当館において開催、正式に発足 いたしました。本協議会は、第2回会合を12月に開催するべく、現在その準備をしているところであります。
(2) また、当館において秋の特別展が「漢籍」をテーマに先月開催されましたが、10月19日、突然、福田康夫内閣総理大臣が視察に訪れました。視察後の当館における記者会見においては、国立公文書館の組織の在り方等について発言され、その内容については、新聞等マスコミにより広く報じられたところであります。
(3) なお、11月13日には、公文書館推進議員懇談会が開催されました。その結果については、近々、政府に対して申入れが行われることとなっております。
 以上のとおり、アーカイブズに関する大きな動きを背景に、国立公文書館としては、今後とも、国や地域社会の記録、そして、そこに住む人々の社会的記憶を歴史資料として重要な公文書という形で未来への共通の財産として継承していくため、国の機関はもとより、地方公共団体等との連携をより一層緊密化し、わが国のアーカイブズ文化の定着と発展に寄与することに努めてまいりたいと考えておりますので、一層のご支援とご協力をお願いいたします。
 最後に本日ご参集の皆様方のなお一層のご活躍と全国歴史資料保存利用機関連絡協議会の益々のご発展を祈念し、私の挨拶とさせていただきます。